ザ・ロード

ザ・ロード
『告白』以上の衝撃度。ウィゴの真に迫るサバイバルな演技場凄すぎます！　人類滅亡後に生き残ることを選択した父子のサバイバル・ロードムービー。太陽の日差しを失った世界は薄暗く、どのシーンもモノトーンに近い色彩で描かれていました。

　果てしなく荒廃した世界を広角レンズで捉えるところに。一分の隙も見せないくらいの臨場感を感じさせてくれます。美術とＣＧが融合した素晴らしいリアルティです。そして廃墟が続く映像であっても、本作のようにパターン化されて切り取られると、いい知れない恐怖と絶望を包含しつつも、詩的な情緒を感じさせる映像美を魅せてくれました。

　あと半世紀以内で、現文明の終焉を感じている小地蔵にとって、単なる空想でなく、凄く実感を伴ってみてしまったので、身につつまされました。

　フォトンベルトの接近は、かなりの高い可能性で本作のような事態を引き起こすことになるでしょう。



　それにしても本作のヴィゴ・モーテンセンの演技は凄すぎます。いかなる試練に直面しようとも、立った独りの我が子を命がけで守り抜く父親の深い愛情を体現しています。

　シーン中ハダカになるシーンもあるのですが、身体はがりがりに痩せていました。あえて役作りのためにロケ地の過酷な自然環境に身を投じて、役柄通りのサバイバルを体験したそうなのです。ヴィゴのファンの方は必見でしょう。



　また本作のために抜擢された子役のコディ・スミット＝マクフィーもウィゴが絶賛するほど素晴らしい演技でした。救いのない本作の世界で、無垢な瞳と澄んだ心を持つまるで天使のような少年を、瑞々しく繊細に描いています。実はコディのピァアなキャラは、本作に欠かせない重要な伏線となっていたのです。



　本作が描く終末後の世界は、寒さと飢えに満ちて、生き残った僅かな生存者たちは、略奪しあい、女と見れば強姦し、用済みとなれば殺害して人肉を喰うまでが日常茶飯事。人と出会うことは、殺人鬼と出会うことと等しい実態だったのです。

　しかし、主人公の父子だけは違っていました。父は愛するわが子に、決して人間性を失わず“善き者”であり続けようと続けていました。



　しかし、物語の作り主は、そんな父子に次々試練を与えます。盗賊団の襲撃、泥棒との出会い、いきなりホーガンを撃ってくる婦人・・・。とてもアカの他人を素直に信じられる状況ではありません。そんな過酷な道を歩ませても、父子は“善き者”であり続けることができるのだろうか、聖書のヨブのように物語の作り主は、父子に試練を与えていくのでした。



　物語の作り主の「期待」に答えるかのように、息子は、善なる道を信じ、道であった人を怖からず、食糧として喰らおうとせず、泥棒を働いた者にも乏しい食糧のなかから施しを与えようとまでします。

　そんな息子の心情を通して、本作のタイトルの『ザ・ロード』とは、凄く深い意味が込められていると感じました。

　作品のなかで、宗教や神は全く出てきません。物語の作り主に依る数々の試練は、まるで父子の信仰心を試しているかのような問いかけなのです。それは神に対しての直接的なものでなく、人間の本質である善なる心に対してのものでした。人は過酷な環境のなかでも良心や他人を信じ続けられる事ができるだろうかと問いかけは、極めて宗教的な命題を包有していると思います。

　加えてラストでとあることにより、この父子の行動は、ずっと善意ある人々によって見守られ続けてきたのだという事実が明かされます。この善意ある人々との出会いを、少年が素直に信じられるか、拒絶するのかが、核心部分として描かれていたのです。

　人を信じることが、本作ほどに重い決断を伴う問いかけになるとは、思いもよりませんでした。

　

　ところで父親が病死したところで、残された子供の末路を見たくないせいか途中で退場する人もでてくるほどシリアスでした。『告白』でも衝撃でしたが、本作も余りの過酷な運命に放り込まれた状況に、放心状態となるほど絶句しました。

　最後にチョットホッとさせるいいシーンもありますので、最後まで見てください。



　また随所にカットバックされる父親の回想シーン。それは生きる意欲と希望を失った妻との別れの場面でした。くどいほどにリフレインされるなかで、どんなに父親は妻を愛していたのか偲ばれます。

　そして回想シーンでは、既に世紀末を過ぎてた後の出産を拒み続け、自殺を希望する妻を説得して、俺が守るからと懇願して、何とか産ませたという一子誕生の経緯が語られます。この回想が、その後の父親の我が子への思いの強さを印象強くさせてくれました。

　だから、今生の別れとなる妻との決別シーンは、ホロリとさせられましたね。

　妻役のシャーリーズ・セロンもなかなか気持ちのこもった演技でした。



　『ノーカントリー』の原作者が原作となる本作だけに、深遠なテーマが綴られます。人類が進むべき「道」について、ぜひあなた様も思惟されることをお勧めいたします。なかなかの傑作ですよ。

ttp://movie.goo.ne.jp/usr/10012773/movie/MOVCSTD16331/index.html
「明き目盲」(あきめくら)という慣用句があります。
一見見えているようで、実は見えていない目。また、その人。文字を
読めない人、学のない人。見えていても物の存在や、本質に気づかない人
。転じて、ぼんやりもの。んー耳が痛い言葉ですｗｗｗ
というか私のためにあるような言葉ですねｗｗｗ
男たるものそんなことではいけないんですが、もっとしっかりしないと！


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