必死剣鳥刺し

必死剣鳥刺し
残念ながら落ちがよくない一言でいえば「下級官僚の悲哀」ということでしょうか。



以前、小泉元首相が「しょせん政治家は使い捨て」と言い放って物議をかもしたことがありましたが…。

同じようなもので、どのみち、こんな運命に巻き込まれることは、官僚の世界にはつきものの話で、別に珍しい話ではありません。

自ら士官をしてお城勤めをしている官僚の兼見三左エ門（豊川悦司）にも、そのことは十分に分かっていたはずです。



まして、その身が武士であれば、藩政の都合によっては、その身がどのように遇されるかは、藩命次第…当たり前のこと。



そもそも、藩政の安泰のため、ご別家さまを打ち取らなければならない。



そのためには誰を刺客に仕立てるか。類まれな剣の使い手で、かつ仕事が終わってからも、藩政の将来に累の及ばない者でなければならない。



兼見であれば、天心独名流の剣の使い手で「鳥刺し」の必殺技も身につけている。現に連子（関めぐみ）の暗殺では、周囲の牽制の暇もなく事をなしとげるなど、腕前は確かだ。妻を病で失い、今は独身で、扶養すべき家族もいない。いざというときは、「連子さまも殺害した乱心者」で片づけることができる。



家老である津田民部（岸部一徳）の人選は、きわめて合理的ではないでしょうか。



究極には藩政の安泰を考えた、そのような津田の政策判断（藩命）を、下級とはいえ官僚である兼見は、なぜ理解し、これに従うことができなかったのか。

自らも、それは「公務のために死ぬこと」であると見つけたはずの武士だったのに。



最後に、「ご別家さま」の帯屋隼人正（吉川浩司）を切り捨てて、津田から（形式的に）反逆の汚名を着せられた時に、兼見三左エ門（豊川悦司）はいさぎよく腹を切るべきだったのではないかと思います。



そうすれば、「記録に残された事実はともかく、その実は藩命のために殉職した」という美名だけが人づてに後世に残ったはずでしたから。



しかし、彼は、そうしなかった。



そうしなかったばかりか、秘伝のはずの「鳥刺し」の剣を、あろうことか津田に向けてしまった。せっかくの秘伝の技を、単なる「恨みつらみ」の解消に使い、単なる「恨みつらみ」を晴らすための道具に堕してしまった。そう評されても仕方がないのではないでしょうか。



「裏でこっそりと画策していた悪役」の家老を仕留めるために、最後に兼見は必死剣の技を繰り出した…そう言いたいのなら、単なる俗受けを狙ったつまらないへ理屈というほかありません。

本当につまらない結末−評論子にはその言葉しか思い当たりません。



兼見が心血を注いで会得した「鳥刺しの剣」が、さぞ泣いていることでしょう。



起承転結のうち、「起承転」の部分は、ストーリーの迫力や展開も他の大作なみであっただけに、このつまらないラスト・シーンには落胆を禁じ得ません。



残念ながら落ちが良くない−この一言に尽きてしまうようです。



書いているうちに、我ながら「酷評」になってしまいました。

それでも、この試写会を観る機会をくださったH.T.さんに深く感謝します。

本当に、ありがとうございました！



［平成22年６月28日　試写会観覧］

ttp://movie.goo.ne.jp/usr/10017367/movie/MOVCSTD16297/index.html
人って愛情が不足していると人間が変にねじまがったり、
ひねくれたりするんですよね。そこに愛はあるのかい？とはよく言った
もんですよ！愛がなければ人間らしいとは言えないんですよ！

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