男はいくら結婚しても一人になりたい時があるもんなんですね!
必死剣鳥刺し
ラストの立ち回りばかりでなく、想いを寄せる里尾の情感描写が細やかで素敵でした。 藤沢周平原作の剣客シリーズは、東北の庄内地方を舞台に、いつも運命に翻弄される主人公の剣客とその剣客が繰り出す奥義の剣をテーマに描かれています。
本作は、これまで映画化されてきた剣客シリーズのなかでも、一番不条理な結末に心を動かされ、そして予想だにしない奥義の出現シーンとその内容に脅かされました。
まさ触れ込みにあるとおり最後の15分の決闘シーンは圧巻で、時代劇作品の歴史に残る名作として語り継がれることでしょう。
特筆すべきは、寡黙な主人公兼見三左エ門を演じた豊川悦司の普段見慣れた時代劇への感覚を飛び越えた気迫ある演技です。台詞の数が少ないだけに、余計に強く感じさせられました。
それと同時に印象的だったのは、左エ門の姪でありながら密かに想いを寄せる里尾の存在。いじらしいほど感情を押し殺しながら三左工門の世話に喜々とする表情に、どことなく落語の人情噺を連想しました。落語好きな平山監督だけに、里尾の所作や表情の細やかな演出の付け方は絶妙です。その演出に答えて愛らしい表情を見せる池脇千鶴の演技が見事に填っていました。
思いが叶って三左エ門と一夜を共にした朝に見せる里尾の幸せそうな表情。それだけにラストに知人宅に預けられたまま三左エ門を待ち続ける里尾の姿に哀れみを感じさせられました。
原作は、“隠し剣″シリーズとして知られる藤沢の連作剣士小説の一編。舞台は東北・海坂藩です。豊川演じる中級武士の三左エ門が、失政の元凶となっていた藩主の側室をいきなり刺殺する場面から始まります。
もとより極刑は覚悟で刃傷でした。しかしそれに対する処分はなぜか1年の閉門。里尾の献身に支えられ生きる力を取り戻していきます。
ここでストーリーは、小刻みにカットバックされて、死別した妻のめいや里尾への思いを絡めて描かれます。けれども、寡黙な三左エ門は、過去の回想でも胸の内をほとんど観客にも語らろうとしません。
主演の豊川ですら「側室を殺す理由を始め、ひっかかる部分はあった。」とインタビューで語っています。しかしよく考えてみれば、「そもそも人間ってそんなに知的に自分を理解しているものでもない」と豊川も思い直して最終的には『わからなくてもいいんじゃないか』って演じきったそうです。
1年の閉門の閉門の後に三左エ門へ届いたのは、近習頭への異例の抜擢。しかし、取り立てた藩主は、三左エ門の顔を見たくないというのです。ここまで三左エ門の処分について何もネタバレされなったので、ますます何故だろうと疑問が深まりました。
それは中老・津田民部によって明かされました。
三左エ門が「烏刺し」という必勝の技の使い手であったことから、藩主家と対立しているご別家の帯屋隼人正との対決のために助命したというのでしたでした。帯屋は直心流の達人であり、藩内に三左エ門の他には敵うものがいなかったのです。
全てを悟った三左エ門は、里尾と一夜を交えた朝に、里尾を知人宅に向かうように言いつけます。そこで自分を信じて待てと。最後の15分の殺陣のシーンも良かったけれど、この二人が名残を惜しみつつ別れるところも人情細やかな描写で、なかなかよかったです。
ところでこのとき津田が三左エ門に烏刺しの別名、『必死剣』の意味を問いただします。三左エ門が答えて語るには、この剣を使うときは、重大な危機を迎えたときで、既に拙者は死んでいることでしょう。死して生きる剣だから「必死剣」という名前をつけたといいます。これはこの奥義がいつ繰り出すのか重要なヒント。烏刺しの描写は、平山監督と殺陣指導の久世浩が試行錯誤を重ねて考えたそうです。どこでどう登場するかは見てのお楽しみ(^。^)
見事、帯屋を討ち果たして、里尾の元に駆けつけるのかと思いきや、ここからが最終盤15分の壮絶な立ち回りの始まりでした。そして寡黙だった三左エ門の感情が爆発します。組織の不条理の直面したとき、主君のため剣を抜くが、恩わぬ策略を知り、その剣、形相は激変していくのでした。政道と己の生を必死に問いつづけつつ、迷いながらも襲ってくる剣を必死に払いのけ、仕方なく真剣であがらい始めます。
豊川はその時の心境を「三左エ門は自分の意思でほとんど感情を出さない。でも、立ち回りではその本質をのぞかせたかった」。といいます。そして「普段、何も言わない人が痛いって言うと、本当に痛そう。しかも、心も痛い、苦しい。そのニュアンスは絶対出したかった」 といいますが、本当の悲痛な三左エ門の心の痛みが伝わってくる立ち回りでした。
原作では「巨躯」と形容される主人公。約5キロ体重を増やして撮影に臨んだそうです。思い描いたのは「軟らかい岩」のようなイメージだったとか。「大きくて重量感があって動かなそう。でも、意外と色々な形に彫っていける」。
もう一つ、「東大出身の相撲取りのようなイメージ」もあったそうです。唐突なようだが、説明を聞けば納得できます。「すごく頭は切れるけれど、決して表に出さない。剣の達人も、むしろそう見えないものだったり、愛を語らない人ほど愛情が深かったりする。」豊川は三左エ門に関しては、そういう考え方で役作りをしたそうです。
普段時代劇を見ない方にも、きっと納得してもらえる傑作ですので、ぜひお勧めしたいと思います。
ttp://movie.goo.ne.jp/usr/10012773/movie/MOVCSTD16297/index.html
映画を愛する私ですが、最近忙しくてとんと観てないですねぇ。
今の生活は色んな意味で忙しくてめまぐるしいですが、
ひと段落ついたらゆっくり映画でも観たいですね〜。
て、なかなか実現しないんですよね、こういうのってwww
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ラストの立ち回りばかりでなく、想いを寄せる里尾の情感描写が細やかで素敵でした。 藤沢周平原作の剣客シリーズは、東北の庄内地方を舞台に、いつも運命に翻弄される主人公の剣客とその剣客が繰り出す奥義の剣をテーマに描かれています。
本作は、これまで映画化されてきた剣客シリーズのなかでも、一番不条理な結末に心を動かされ、そして予想だにしない奥義の出現シーンとその内容に脅かされました。
まさ触れ込みにあるとおり最後の15分の決闘シーンは圧巻で、時代劇作品の歴史に残る名作として語り継がれることでしょう。
特筆すべきは、寡黙な主人公兼見三左エ門を演じた豊川悦司の普段見慣れた時代劇への感覚を飛び越えた気迫ある演技です。台詞の数が少ないだけに、余計に強く感じさせられました。
それと同時に印象的だったのは、左エ門の姪でありながら密かに想いを寄せる里尾の存在。いじらしいほど感情を押し殺しながら三左工門の世話に喜々とする表情に、どことなく落語の人情噺を連想しました。落語好きな平山監督だけに、里尾の所作や表情の細やかな演出の付け方は絶妙です。その演出に答えて愛らしい表情を見せる池脇千鶴の演技が見事に填っていました。
思いが叶って三左エ門と一夜を共にした朝に見せる里尾の幸せそうな表情。それだけにラストに知人宅に預けられたまま三左エ門を待ち続ける里尾の姿に哀れみを感じさせられました。
原作は、“隠し剣″シリーズとして知られる藤沢の連作剣士小説の一編。舞台は東北・海坂藩です。豊川演じる中級武士の三左エ門が、失政の元凶となっていた藩主の側室をいきなり刺殺する場面から始まります。
もとより極刑は覚悟で刃傷でした。しかしそれに対する処分はなぜか1年の閉門。里尾の献身に支えられ生きる力を取り戻していきます。
ここでストーリーは、小刻みにカットバックされて、死別した妻のめいや里尾への思いを絡めて描かれます。けれども、寡黙な三左エ門は、過去の回想でも胸の内をほとんど観客にも語らろうとしません。
主演の豊川ですら「側室を殺す理由を始め、ひっかかる部分はあった。」とインタビューで語っています。しかしよく考えてみれば、「そもそも人間ってそんなに知的に自分を理解しているものでもない」と豊川も思い直して最終的には『わからなくてもいいんじゃないか』って演じきったそうです。
1年の閉門の閉門の後に三左エ門へ届いたのは、近習頭への異例の抜擢。しかし、取り立てた藩主は、三左エ門の顔を見たくないというのです。ここまで三左エ門の処分について何もネタバレされなったので、ますます何故だろうと疑問が深まりました。
それは中老・津田民部によって明かされました。
三左エ門が「烏刺し」という必勝の技の使い手であったことから、藩主家と対立しているご別家の帯屋隼人正との対決のために助命したというのでしたでした。帯屋は直心流の達人であり、藩内に三左エ門の他には敵うものがいなかったのです。
全てを悟った三左エ門は、里尾と一夜を交えた朝に、里尾を知人宅に向かうように言いつけます。そこで自分を信じて待てと。最後の15分の殺陣のシーンも良かったけれど、この二人が名残を惜しみつつ別れるところも人情細やかな描写で、なかなかよかったです。
ところでこのとき津田が三左エ門に烏刺しの別名、『必死剣』の意味を問いただします。三左エ門が答えて語るには、この剣を使うときは、重大な危機を迎えたときで、既に拙者は死んでいることでしょう。死して生きる剣だから「必死剣」という名前をつけたといいます。これはこの奥義がいつ繰り出すのか重要なヒント。烏刺しの描写は、平山監督と殺陣指導の久世浩が試行錯誤を重ねて考えたそうです。どこでどう登場するかは見てのお楽しみ(^。^)
見事、帯屋を討ち果たして、里尾の元に駆けつけるのかと思いきや、ここからが最終盤15分の壮絶な立ち回りの始まりでした。そして寡黙だった三左エ門の感情が爆発します。組織の不条理の直面したとき、主君のため剣を抜くが、恩わぬ策略を知り、その剣、形相は激変していくのでした。政道と己の生を必死に問いつづけつつ、迷いながらも襲ってくる剣を必死に払いのけ、仕方なく真剣であがらい始めます。
豊川はその時の心境を「三左エ門は自分の意思でほとんど感情を出さない。でも、立ち回りではその本質をのぞかせたかった」。といいます。そして「普段、何も言わない人が痛いって言うと、本当に痛そう。しかも、心も痛い、苦しい。そのニュアンスは絶対出したかった」 といいますが、本当の悲痛な三左エ門の心の痛みが伝わってくる立ち回りでした。
原作では「巨躯」と形容される主人公。約5キロ体重を増やして撮影に臨んだそうです。思い描いたのは「軟らかい岩」のようなイメージだったとか。「大きくて重量感があって動かなそう。でも、意外と色々な形に彫っていける」。
もう一つ、「東大出身の相撲取りのようなイメージ」もあったそうです。唐突なようだが、説明を聞けば納得できます。「すごく頭は切れるけれど、決して表に出さない。剣の達人も、むしろそう見えないものだったり、愛を語らない人ほど愛情が深かったりする。」豊川は三左エ門に関しては、そういう考え方で役作りをしたそうです。
普段時代劇を見ない方にも、きっと納得してもらえる傑作ですので、ぜひお勧めしたいと思います。
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